お笑いの“味”を見極める

お笑い × 効果・効能 仕組み

公開日:2014/01/07

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お笑いに見られる4つのポジション

年末に差し掛かるとよく話題にのぼる「流行語大賞」。ノミネートされる中には、後に「一発屋」と呼ばれることになるお笑い芸人のギャグが入ってくることもしばしばあります。

お笑いの世界には、「一発屋」の他に「大御所」「ひな壇」「若手」「リアクション」など、ポジションを表す言葉が存在します。自分がどのポジションにいるによって、売れ方が変わってくるため、芸人にとっては死活問題。このポジションを見つけられないと、お笑いの世界で売れることが厳しくなることもあります。

では、芸人が注目を集め、売れるためには、どのようなポジション探しの仕方をすればいいのでしょうか? これは「食」に置き換えると考えやすいのです。

大衆に好まれる人気芸人たち

例えば、誰もが認める「大御所」と言われている明石家さんま。老若男女の垣根を問わず笑わせることができ、定番のギャグも持ちつつ新しいアレンジも効く。そんな食べ物といえば、醤油ラーメンではないでしょうか。

日本人のダシをベースにした、普遍的な味。抜群の安定感に加えて、奇抜なトッピングにも耐えられる素晴らしさ。そして何より、それ一食だけで、満足のいく食事になりえます。

同じ大御所でもビートたけしは少し毛色が違い、こちらはトンコツラーメンと言えるでしょう。ですが、好みによって受け入れ方も変わり、必ずしも万人に好まれる味ではないでしょう。

「ひな壇芸人」を代表する存在と言えば、勝俣州和。どんな話題でも、どんな振り方でもタカイクオリティで返す安定感があり、使う側も見る側も安心できます。鶏の唐揚げのように外さない味と言えます。あくまでおいしい定番商品でありながら、価格も庶民的なお手ごろ感を感じさせます。

一方、新鮮さが売りの「若手」は、昨今流行の“B級グルメ”に近い存在。知ったような味だけど何か目新しい、ちょっとお試し心をくすぐられるメニュー。定着するかは、神のみぞ知るという表現がぴったりです。

狂言はどこへいった?

このように、現代のお笑いは、あくまでも庶民派グルメの志向が強いことがうかがえます。では高級なお笑いとなると、どのようなものがあるでしょうか

ここで狂言に注目してみましょう。狂言は、現代風に言うと吉本新喜劇のようなもの。その歴史は古く、およそ1300年前の奈良時代から始まっています。「散楽」という中国から渡ってきた大道芸のようなものから発達し、室町時代にコントの要素が加わった喜劇として誕生しました。

当初はアドリブ中心で、決まった型もなく町中で庶民を相手に演じられていました。江戸時代に入ると幕府の庇護を受け、高嶺の花のように洗練されていきます。ここが狂言の大きな分岐点になりました。

明治維新で幕府が消滅した時、後ろ盾をなくして危機に陥ったのです。幕府おかかえとなり一般大衆から上流階級向けとなった狂言は、いわば懐石料理のような高級文化のひとつとして認識されていました。その味わいが素晴らしいことは間違いないのでしょうが、ラーメンや唐揚げのように、庶民に愛される味からは遠ざかってしまったのです。

大衆心理をおさえた者が勝者になる

こうした比喩ができあがったところで、マーケティングの分析手法である、プロダクト・ポートフォリオ・マネージメント(PPM)を取り入れて、さらに「お笑いの価値」を細分化してみましょう。

PPMは、ひとつの商品が今現在、市場成長率と市場シェアにおいて、市場のどの地位におり、どこを目指すとより売れていくのかを示すフレームワークです。この中で商品は、

「花形商品」「金のなる木」「問題児」「負け犬」という4つのカテゴリに分類されます。

【12-5】お笑いの“味”を見極める【完成版】

お笑いでいう「一発屋」「大御所」「若手」「ひな壇」をここに当てはめると、市場成長率が高く市場シェア率も高い花形商品は、次々とヒット番組を生み出す「大御所」となるでしょう。次に、市場を成長させるほどのけん引力は持ち合わせていないものの、大衆受けしやすいのは「ひな壇」芸人。彼らは番組を安定させ、大御所のフォローアップ能力に優れているので、組み合わせによっては「金のなる木」に変貌しやすいのです。

そして、市場成長率が高いものの市場シェア率において難があるのは「一発屋」。急激に市場の雰囲気を変えますが、長続きせず、真の意味での大衆化にはなりえません。そして市場成長率・シェア率ともに貢献度が薄いのはやはり「若手」。もっとも彼らがキャリアを積み重ねれば、花形商品や金のなる木に成長していきます。そこはやはり「ひな壇」のような実力派にもまれる必要があるのです。

そう考えると、「ひな壇」芸人は商品強化力においても重要な役割を担っていると言えます。PPMを通してみると、実は「金のなる木」に必要なものは、何よりも市場(=大衆)というパイになります。先に述べたように、大衆の心に響くのは、身近なほっとするひと品。

つまり市場を支える柱にもなりえる存在。だからこそ、明石家さんまは、目立ち方だけでなく、さまざまな分野の知識を未だに勉強しているそうです。日本トップクラスの大御所芸人となってもなお、大衆を研究し、大衆に好まれるネタをストックし続けていることは、老舗のラーメン屋が大衆に好まれ続けた味をブラすことなく日々守っていくことに似ています。

いかに目立つかではなく、いかに人々に溶け込めるか。その普遍性の追求が、最終的に「売れる」ことへとつながっていくのでしょう。

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